ハワイ島の東側には熱帯雨林が広がり、びっくりするぐらい大きく育った植物をそこかしこで目にします。中でもよく見かけるのがハープウと呼ばれるハワイ固有種のシダ。人の身長を軽く越え、巨大なものでは6メートルぐらいの大きさになるものもあります。そうなると見た目はもはや、シダというより樹木のようです。
このハープウ、太くなった幹の部分はデンプン質が多いため、古代ハワイアンは 食用にしました。ただし、調理に時間と手間がかかる割には満腹感が得られないので、タロ芋や他の炭水化物が手に入らない、飢饉の時のみの非常食料だったといいます。またハープウの繊維を利用したビジネスもかつてありました。ゼンマイ(若い葉)の部分は、茶色のフサフサとした毛に覆われています。触ると柔らかで、まるで動物の毛皮をなでているよう。そんなわけで、この毛をクッションやソファの中身に利用すると思い立った人がいたのです。しかし乾燥したハープウの毛は細かくちぎれてしまい、クッションとしては長持ちしなかったようで、この利用法はすぐにすたれてしまいました。
時に、野生の豚はハープウの根っこの部分が好物で、掘り起こして食べてしまいます。その後に出来た幹の空洞に溜まった雨水に蚊が大量発生し、その蚊が媒介するマラリアによって森に住む固有種の鳥たちが重大な被害を負っています(豚はもともとハワイには生息せず、ポリネシア人が移住とともに持ち込んだ動物。また蚊は、19世紀中頃、輸入された植物にボウフラが寄生していたことからハワイに侵入した外来種)。中には絶滅してしまった種も。このため、国立公園や野鳥保護区では柵を作って野豚が侵入できないようにしているほどです。
このハープウを間近で見やすいのは、火山国立公園やアカカ・フォールズなど。写真は火山国立公園のトレイルで撮影したものです。