先週末、ひとつの大きなニュースがハワイ島を駆け巡りました。マウナケアの山頂に直径30mの巨大な鏡を持つ、天体望遠鏡が建設される事が決まったのです。
マウナケアはハワイ島の中央に位置し、4200mの標高をいただく環太平洋一の高山です。ハワイでも雪が降る珍しい山として知られていますが、この山が特別なのはそれだけではありません。山頂ははるか雲の上になるため、一年の九割以上が晴れていて、観測の邪魔になる空気のゆらぎが少ない、太平洋の真ん中で街の灯などの光害が少ない、さらに緯度が低いためほぼ全天体の観測ができるなどなど、世界でも類をみないほど天体観測に最適な場所なのです。
山頂にはすでに世界各国の天文台が13ほど並んでいます。日本の国立天文台[すばる]もそのうちのひとつです。
天文学界ではより大きな望遠鏡を建設しようという競争が常にあるようですが、略称TMTと呼ばれるこの30mの天文台、世界一の大きさを誇るという肝いりで計画されました。現存する最大の望遠鏡の9倍もの精度を誇り、施設全体の大きさは、現在マウナケアにある13の天文台を合せたよりも広大になるそうです。
この計画は2009年の夏に立ち上げられたのですが、当初からたいへんな争議を巻き起こしました。なぜなら、マウナケアはハワイアンとっては、ハワイ文化のルーツともいえる大切な聖地。すでに建設済みの天文台ですら、ハワイ文化をないがしろにする行為だと快く思っていない人々もいる状態で、アメリカン・フットボールのフィールドぐらい巨大な人工物をさらに建てようというのですから、それはもう上を下への大騒ぎだったのです。
4年に渉る長いリサーチと交渉期間を経て、ハワイ州からゴーサインが出たのが先週金曜日。ハワイアンの活動家たちと十分に話し合い、環境アセスメントを行い、天文台の関係者にはハワイ文化を尊重するよう教育を行うなどの配慮がなされた上での承認だということです。しかし、これだけのものを建設するとなると、よいか悪いかは意見の分かれるところとして、マウナケア山頂の環境がずいぶん変わるのは避けられなさそうです。このTMTの建設、一年以内にはスタートする予定です。
※写真は現在のマウナケア山頂付近です。
↓TMTのウエッブサイト(英語)
http://www.tmt.org/