朝の海ほど気持ちのいいものはありません。私のフラ・ハーラウではときどきヒウヴァイといって、自分自身を清めるために夜明けの海に集まることがありますが、あまりにすっきりするので、一人で朝の海を訪れることもあるくらいです。田舎育ちの私は、昔から朝方に渓流の水に足をつっこみにいくのが好きだったので、その習慣が今では海に変わったのでしょう。
朝方の海辺に座って、ごろりと寝転ぶと、横にあるのは海辺に這うように咲くパーウー・オ・ヒイアカ。朝の空気ともに薄紫色の美しい花びらを開くこの花のなかに寝そべると、安心感が広がります。皆さんのなかで、それぞれの植物が違ったエネルギーを持つのに気がついている方も多いかと思いますが、私はこのパーウー・オ・ヒイアカに大きな包容力を感じるのです。
それもそのはず、パーウー・オ・ヒイアカは女神ペレのお気に入りの妹、ヒイアカ・イ・カ・ポリ・オ・ペレを守った植物。大地を創り出す火山の女神ペレは、妹であるヒイアカ・イ・カ・ポリ・オ・ペレの入った卵を抱いて海へ出かけます。奔放な気性のペレはサーフィンにはもってこいの波を見ると、妹の入った大事な卵を海辺に置くと、すぐさまサーフィンをはじめ、妹のことなどすっかり忘れてサーフィンに夢中。
ところが日はどんどん高くなり、真昼の太陽が卵をじりじりと痛めつけはじめました。後にペレと対抗する力を持つことになるヒイアカ・イ・カ・ポリ・オ・ペレですが、このときは卵のなかの赤ちゃんですからなす術もありません。すると、海辺に咲くパーウー・オ・ヒイアカがスルスルとその蔓状の手足を広げて卵の回りを囲みはじめ、卵を覆い、日陰を作って卵を守ったのです。
ヒイアカ・イ・カ・ポリ・オ・ペレは後に地上の生命、自然を司る重要な役目を担う存在。そんな彼女にも、どうにもならない危機はやってきたのです。それを救ったパーウー・オ・ヒイアカは、まさに私たちの守護神と言えるでしょう。
マウイ島では特に島の南側の海辺に多く、北側も日当りのある砂浜には見ることができます。日が高くなると花を閉じるようですが、朝方や夕方はうっすらとした可憐な花びらを広げています。