ノースショア/7マイルの奇跡

2020.03.18

聖地という言葉を軽々しく口にしてはいけないことは承知しているが、ノースショアがサーフィンの聖地であることは異論の余地はないだろう。ハワイの島々には、ノースショアと呼ばれるエリアがあるが、サーファーにとってのノースショアは、オアフ島の北海岸に他ならない。距離にしてわずか7マイル(11km)ながら、この海は世界中のサーファーにとっての憧れなのだ。

冬になるとアリューシャン列島の低気圧からウネリが押し寄せ、目を見張るような巨大でパワフルな波がノースショアの至る所で炸裂する。たった11km足らずの海岸線に、ワールドクラスの有数なサーフスポットが点在することから、「7マイルの奇跡」と呼ばれている。シーズンになると、“奇跡”を求めて腕に覚えがあるサーファーが世界から集まってくるのだ。

では、このノースショアを巡ってみよう。ホノルルからH1、H2を乗り継いで、カムハイウェイをパイナップル畑をドライブすると、その先にビロードのようなウネリが押し寄せる紺碧の海が現れる。ノースショアだ。サーファーはこの風景に心を震わせる。待ちに待った波への喜び、そして畏怖。過去、この海で命を落とすサーファーもいた。ノースショアは生半可なサーファーが上がれるステージではないのだ。

ノースショアの玄関がハレイワだ。今はショッピングセンターもオープンして観光地化が進んでいるが、どこか懐かしい雰囲気が漂う。海のインサイドではキッズ達がサーフィンのレッスンを受けていて、大人達がアウトサイドの波を楽しんでいる。実に家族的なスポットだが、波のクオリティは一級品だ。例年、ハワイのサーフィン王者を決めるコンテストシリーズ、「トリプルクラウン」の初戦の舞台となっている。

数マイルほどドライブすると、眼下に湾が現れる。ワイメアベイだ。ノースショアの中でも最大の波がブレイクするビッグウェーバーだけの神域だ。誰もが納得するサイズにならなければ開催されない特別な大会「ザ・エディ」の舞台だ。幻の大会と呼ばれ、数年前に開催された時は、ひと目みようとカムウェイは記録的な渋滞になった。

さらに北上すると、いよいよパイプラインのお目見えだ。巨大な波がバレルを描き、そのチューブから飛沫とともにサーファーが滑り出てくる。その波は神々しく、そして美しい。多くの歌や映画にも登場してきたおそらく世界でもっとも有名なサーフスポットだ。ここで開催される「パイプラインマスターズ」で優勝することは、プロサーファーにとっての最大の栄誉だ。次に現れるのは、サンセットビーチだ。ノースショアでも屈指の存在感を放つスポットだ。この波を乗りこなすには、サーフィンのすべてのスキルが必要されると言われている。

さらに1マイルほど北上するといよいよツーリストが立ち寄るビーチもなくなり、ロコサーファーの庭とも言えるベルジーランドでノースショアも終わる。

今度のハワイは、サーファーの聖地を巡礼してみてはいかがだろうか。きっと“奇跡”に出会えるはずだ。

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