ナー・ヴァイ・エハー、四つの水を意味します。マウイ島の四つ(エハー)の水(ヴァイ)は、ワイルク、ワイカプ、ワイエフ、ワイヘエと現在も地名として残っていますが、ナー・ヴァイ・エハーとは同時にこの四つの水そのもの、そしてその水源自体を指しているのです。水源はマウイ島の西半分の山々であるマウイ・ウエスト・マウンテン、マウナ・カハーラーヴァイと呼ばれる連峰で、その一番高い頂はプウ・ククイと呼ばれています。マウナ・カハーラーヴァイは実はカウアイ島のワイアレアレ山と並び、世界有数の降雨量を誇ると聞くと、小さな島の自然の底力を感じずにはいられません。
この水源を見るには最適なイアオ渓谷に、朝の早い時間や夕日が傾く前の時間に訪れると、古代からハワイの人々が大切にしていたものが今もそこにあるのを感じます。
マウイ島のクムフラ、ホークーラニ・ホルトは、「イアオ渓谷の奥深くには、いにしえの時代のハワイの王族が眠っています。マウイの島の王たちだけではなく、他の島の王たちもです。それだけ特別な場所なんですよ」と話してくれました。ハワイ近代史のなかでカメハメハ王がハワイ王国と統一したことは知られていますが、ハワイの王たちはそれ以前にも存在し、この渓谷はカメハメハ王とマウイの王たちの激戦の場所でもあります。
激戦の歴史を刻んだ場所でもあり、古代の王たちが望んで選んだ永遠の眠りの場所、渓谷に流れる水を見ていると、時間を忘れてしまいそうになるのは私だけではないでしょう。また、ナー・ヴァイ・エハーの地域に古くから住むハワイアンの友人の家族は、赤ちゃんの産湯にこの水を使って、赤ちゃんの成長を祈るお清めをしたりもします。水なしで生きることはできない私たち、水を大切にすることは生涯をかけてしなくてはいけないことですね。