世界一のフラの祭典、メリー・モナーク・フェスティバルといえば、フラを学ぶものにとってのオリンピックとも呼ばれ、世界最高峰の舞台であり競技会です。その約60年の歴史のなかコロナ禍であった2020年に、初めてメリー・モナーク・フェスティバルの中止が発表されたことは、この舞台のために人生を捧げていると公言しているフラの踊り子たちににとって、大事件でした。
2021年には晴れて開催となりましたが、パレード、クラフトフェア、ライブミュージックなどのイベントは中止になり、フラ競技会も無観客で行われ、毎年恒例のライブ中継も行われませんでした。
そして今年! ようやくパレードもクラフトフェアも生演奏も復活した形式で、華々しく第59回メリー・モナーク・フェスティバルが開催されました。
そもそもメリー・モナーク・フェスティバルとは、ハワイ島ヒロの島興し・津波からの復興を目的に、最初はフラの発表会として1964年にはじめられたもの。当初、メリー・モナーク・フェスティバルはたった9ハラウ(フラの学校)の参加でしたが、現在では厳しい審査をパスして当選した20ハラウ(今年は18ハラウ)のみが参加することができ、その情熱と技量を競うという大変名誉ある大会です。しかも毎年5000人以上の観客を集め、チケットは完売、ヒロのホテルはその期間すべて満室となる一大イベントへと成長しています。
その要となる競技、フラ(hula)とはハワイ語で踊り。『フラダンス』という名称は基本的には間違いのため眉を顰める人も多い表現ですが、ある概念を他言語で紹介するときに、広く認知されている言語で補う表現は、サハラ砂漠などのようによく使われています。
ハワイアンが踊るフラは、ただのエンターテイメントとしての踊りではありません。文字を持たなかった古代ハワイアンにとって、口承でハワイの歴史を伝えていくための叙事詩として文化的にも音楽的にも価値が高い総合芸術であり、また、叙情詩的なチャント(詠唱)を伝達しながら祈る祈祷の手段でもあるのです。フラの中には神話や歴史、祈り、農学系統、天文学、先祖・家系が綴られています。フラを目にする皆さんが一目見て、ハワイの風や波音を感じられるのは、フラがハワイそのものであるからなのです。そのためフラを踊る者には、ハワイ語へのきちんとした理解やハワイ文化や歴史への深い造詣、精神的な成熟と技巧両面での成長が求められます。