長谷川久美子さんと言えば、読者の皆様の中でも、コロナ前、ハワイ島のハワイ火山国立公園などで植物や鳥の観察といった彼女のエコハイキングツアーに参加された方も多いかもしれません。
コロナ禍で、長谷川さんは、自ら目に見える形で環境のために取り組みをしたいと決意され、2021年1月から新しい取り組みをはじめられたんです。今回は、長谷川さんのその取り組みをレポートします。
長谷川久美子さんと言えば、読者の皆様の中でも、コロナ前、ハワイ島のハワイ火山国立公園などで植物や鳥の観察といった彼女のエコハイキングツアーに参加された方も多いかもしれません。
コロナ禍で、長谷川さんは、自ら目に見える形で環境のために取り組みをしたいと決意され、2021年1月から新しい取り組みをはじめられたんです。今回は、長谷川さんのその取り組みをレポートします。
パンデミックでこれまでのツアーのお仕事がなくなってしまったのが、2020年3月の第2週目。それから、長谷川さんは、コロナ前にツアーの仕事でなかなか参加できてなかったボランティア活動に、同年6月から1週間に1度のペースでボランティア活動をはじめました。
そして、同年10月からは、日本のお客様に向けて、ハワイの自然史や自然保護についてオンラインセミナーで、火山、動植物などの自然や自然保護についてご紹介される機会が増えてくるようになりました。そこで、積極的に参加されているボランティア活動についても話されるようになり、もっと自分の手で問題解決につながる活動をすることの大切さを伝えるようになったそうです。
参加されていた活動は、わずかしか残っていない乾燥林の再生や、在来種や固有を植えている公園、枯渇しているオヒアレフアの雨林の保護のためのボランティア活動などで、ハワイ島の西側、北側、南側で行っていたものでした。
そこで、ヒロ在住の長谷川さんが何か地元でできるボランティア活動はないかと思い、ヒロにあるフィッシュポンド「ロコワカ・フィッシュ・ポンド」にたどりついたのです。
長谷川さんは、10年前にこのフィッシュポンドの水辺で固有種であるクロエリセイタカシギ(Aeʻo/アエオ) という鳥を観察したことがあり、その姿が忘れられなかったそうです。
そこで、再びクロエリセイタカシギが訪れるような場所にしたいということを目標に、彼女自身でプロジェクトをはじめられました。写真のクロエリセイタカシギのように、いつの日か、飛んできてもらいたいと、長谷川さんは、その日を楽しみに取り組まれています。
クロエリセイタカシギ Photo by Sherman Wing
2021年1月から、ハワイ島ヒロにあるフィッシュポンド「ロコワカ・フィッシュ・ポンド」(Loko-Waka Fishpond)で、水鳥の生息地の環境再生プロジェクトを、旦那様と一緒に二人でスタートしました。
Photo by Megan Tasaki
ロコワカ・フィッシュ・ポンドは、下記のGoogle mapでもおわかりのように、ヒロ空港からもとても近い場所にあります。
1年後の2022年1月には、「ʻĀina Hoʻōla Initiative」とプロジェクト名称を名付け、活動を行っています。
プロジェクト名の「ʻĀina」とはハワイ語で「生命を維持するために必要なものを与えてくれる土地」、「Hoʻōla」とは「救う/治す」という意味。つまり「healed land(再び健康になった土地)」という意味が込められています。
現在は、その名前の通り、長谷川さんが作業をすればするほど、この土地の命と健康が戻ってきているそうです。
この「ロコワカ・フィッシュ・ポンド」は、この池に面しているレストラン「ザ・シーサイド・レストラン・アンド・アクア・ファーム」がハワイ州土地自然資源局から借りているエリアであり、長谷川さんは、土地自然資源局からの承認と、このレストランからの許可を受けて、作業を行っています。
ちなみに、このレストランは、ハワイで最も古い創立のレストランだそうです。
具体的な作業は、フィッシュポンドに繁殖している外来種の草や木を駆除し、在来種を植えることです。外来種がフィッシュポンドに侵入していることで、フィッシュポンドも徐々に小さくなっているそう。
つまり、外来種を駆除することで、フィッシュポンドも元の姿のように広がり、水の循環も良くなり、陸地に水鳥が上がってこれるようになります。そして、外来種を抜きとった後に、在来種(ʻaeʻaeアエアエなど)を植えることで、水鳥の生息地として蘇らせているのです。
写真1枚目:長谷川さんが外来種を取り除く作業を行っている様子
写真2枚目:長谷川さんの旦那様パトリックさんが池の中の外来種を駆除している様子
写真3枚目:ご家族と一緒に外来種を取り除く作業を行っている様子
Photo by Megan Tasaki
アエアエというのは、ハワイオオバン(ʻalae keʻokeʻo アラエケオケオ)が好んで食べる虫や小エビなどが住む環境(外来の草を駆除してから、見えるようになった陸地の一部は満潮時には水面下の浅瀬になります)を提供してくれるのです。また浅瀬や泥地は、クロエリセイタカシギ(Aeʻo/アエオ)にとって大切な環境となります。そして、鳥たちを捕食する外来種のマングースを駆除します。
フィッシュポンドには、ボラなどの魚も生息しているので、外来種を駆除することで、きっと魚も増えてきたかもしれないですね。
その昔、カメハメハ大王は、ヒロのワイアケアで捕れるボラが大好物だったのですが、カメハメハ大王が好物であったというボラをはじめ、ここで捕れるお魚は、「ザ・シーサイド・レストラン・アンド・アクア・ファーム」で提供されているので、お食事できるそうです。
長谷川さんが2021年1月からはじめた水鳥の生息地保全のためのボランティア作業は、2021年12月まで週3回作業をされていましたが、2022年1月からはレストランでのお仕事と並行して週1回作業を行われていました。そして、2022年10月初めから、レストランでのお仕事を辞め、このプロジェクトに専念され、リジェネラティブ・ツーリズムの道を歩んでいきたいと取り組まれています。
写真1枚目:2021年1月終わり
写真2枚目:2021年2月10日
約2週間で、外来種の草が駆除されたのが写真からも見てわかりますね。
外来種を駆除した後は、在来種アエアエなどを植えていきます。
植えた当初は、土がメインに見えますが、月日がたつと、アエアエがはびこっている様子がわかります。そして、このアエアエを植えたところにネネも含め水鳥や渡り鳥のシギたちが訪れるようになったそうです!
写真1枚目:在来種アエアエ
写真2枚目:在来種アエアエを植えた後
写真3枚目、4枚目:在来種アエアエが育ってきた様子
このフィッシュポンドも含め、ハワイの自然環境はダメージを受けているので、それを治すことを目的に長谷川さんは作業を行ってきましたが、「この1年ちょっとで、すでに治ってきているのが目に見えるようになりました」と、とってもうれしいそうに教えていただきました。
息苦しく外来種の草木で覆われていた地と水が「は~・・・」って息ができるようになってきました。そしてその地に在来種(ʻaeʻaeアエアエ)が再び生えることができ、ʻAlae keʻokeʻo(アラエ・ケオケオ/ ハワイオオバン)やKoloa Maoli(コロア・マオリ/ハワイマガモ)が上がってこれるようになり、Nēnē(ネネ/ハワイガン)も、Kōlea(コレア/ムナグロ)も ʻŪlili(ウリリ/メリケンキアシシギ)も訪れるようになりました。
またフィッシュポンド内や周辺にあった外来種が取り除かれたことで、Koloa Maoli (ハワイマガモ)などの鳥が休憩したり、餌を食べたりする、陸地がレストランの脇以外のところにもできました。
なお、アラエ、ケオケオも、コロア・マオリ、クロエリセイタカシギは、絶滅危惧種に指定されています。
写真1-4枚目:ハワイ州鳥ネネ
写真5-7枚目:ʻAlae keʻokeʻo(アラエ・ケオケオ/ ハワイオオバン)
写真8枚目:ハワイ州鳥ネネ
写真9枚目:ウーリリ(メリケンキアシシギ)
また、フィッシュポンド内の壁(Kuapā)(下記の写真の中央に見える石垣)も見えてきました。
このプロジェクトのゴールは、はじめたきっかけである、10年前に1羽みたという、クロエリセイタカシギ(Aeʻo/アエオ)がこの地に戻ってくることを実現させることです。
長谷川さんが作業をはじめてから、約1年半後の2022年5月14日(土)、長谷川さんの目標であった「クロエリセイタカシギ(Aeʻo/アエオ)が戻ってきた」と夢を実現されました。それも2羽やってきたそうです!
その美しい感動の瞬間は、長谷川さんのプロジェクトのインスタグラムにてご覧いただけます。
https://www.instagram.com/tv/Cdice1egYg-/
長谷川さんは、目標の第一段階は達成できたものの、今後も更なる努力を重ね、アエオが頻繁に来てくれるようになるまで、そしてこの場所に定着して、繁殖してくれるようになるまで、この地の環境再生により一層励まれるとのことです。きっと次の実現も近い将来ですね!
長谷川さんは、「この2羽は、私への励ましのために会いに来てくれたように感じます」とおっしゃってました。本当にその通りですね!
そして、この活動を本職の仕事として、より一層地域に貢献していきたいと、力強くお話いただきました。
長谷川さんは、この夢を実現するために、SNSを開設し、このボランティア活動を一緒に行ってくださる方を募集されています。
Instagram: https://www.instagram.com/aina_hoola_initiative/
Facebook: https://www.facebook.com/aina.hoola.initiative
是非一緒に、活動したいという方がいらっしゃいましたら、ハワイ・ネイチャー・エクスプローラーズのウェブサイトからお問い合わせください。
「今後、皆様がハワイのみならず世界、日本をご旅行される際には、ご訪問されるその土地の人々のことを想い、その地域の皆様と繋がり、深まるような旅を是非なさってください。
訪問される場所には深いストーリーがあります。そのストーリーを知ることで、その土地のことをもっと感じることができると思います!」
そして、長谷川さんが、コロナ禍で一番心に響いたという ロバート・ベーデン-パウエルさんの名言をシェアいただきました。
Try to leave this world a little better than you found it.
この世の中をあなたが生まれてきたときよりも少しで良いものにして残すように努めよ。
Robert Baden-Powell
ロバート・ベーデン-パウエル
長谷川さんの素晴らしい取り組みいかがでしたでしょうか?この地が日に日に蘇っていることは本当にすごいことですし、これからの変化も楽しみです。
私達が住む地球、マラマの思いやりの心をもって、環境保護、次世代に向けた行動を何か1つでも毎日行っていくことが重要ですね。
兵庫県加古川市出身
自然解説員(ネイチャー・インタープリター)として、自然を解説して伝えるという業務。主にバードウォッチングや植物観察などを通してハワイの自然の面白さを伝えている。
関西外語大学ハワイキャンパスに通うことをきっかけに、1983年からハワイで暮らす。学生時代は、オアフ島ホノルルで過ごし、卒業後、日本にはほんのわずかの期間戻り、アメリカ本土に2年ほど在住する。人生の半分以上はハワイ島で過ごす。
詳細は、http://hawaii4u2c.com/profile/ よりご覧いただけます。
Photo by Megan Tasaki