ホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ賑やかなワイキキの街を、囲むように造られたアラワイ運河。ワイキキ滞在中に、運河沿いを散歩したり、運河にかかる橋を渡って、アラモアナ・センターに歩いて行った方もいらっしゃるのでは?
全長約3.2㎞、幅51m~83m、建設当初は深さ3m~7m。1928年に完成した、歴史ある大きな運河です。もうすぐ完成から100年という時間の経過と共に、この運河にも、様々なことがありました…。
ホテルやコンドミニアムが立ち並ぶ賑やかなワイキキの街を、囲むように造られたアラワイ運河。ワイキキ滞在中に、運河沿いを散歩したり、運河にかかる橋を渡って、アラモアナ・センターに歩いて行った方もいらっしゃるのでは?
全長約3.2㎞、幅51m~83m、建設当初は深さ3m~7m。1928年に完成した、歴史ある大きな運河です。もうすぐ完成から100年という時間の経過と共に、この運河にも、様々なことがありました…。
ワイキキの北側に広がる山脈から、ワイキキに向かって流れ込む複数の川をせき止める役割を果たしているアラワイ運河。建設当初、運河沿いには小さな椅子が並び、のんびりと釣り糸を垂らす人々や、ボート遊びをする人々の様子が写真に残っています。(昔の写真は、コラム最後に掲載してあるリンク先でご覧いただけます。)
しかしこの運河には、川の水だけでなく、道路脇の排水溝に流れ込んだ雨水やゴミなども流れ込み、年を追うごとに水質は悪化。さらに、アラワイ運河の水が「有害」となった出来事が、2006年3月に起きています。この年の3月は、連続して雨が降り続け、ついにワイキキ近辺の下水管が破裂。急いで修理が行われましたが、大量の汚水に対処しきれず、当時の市長がやむを得ず、処理前の下水をアラワイ運河に直接流す決定を下します。
ちょうどその頃、やっと晴れ間が出た時にアラモアナ・ビーチ・パークに行くと、ビーチには多くの人出がありました。ただ、「海の色がいつもとは違うな…変だな…」という印象。その後、湿疹を発症する人が出たり、運河の水に落ちた人が感染症で病院に運ばれるなど、人々の健康にも影響が出てきてしまいました。
ワイキキ近辺の海水の水質については、その後、間もなく改善されましたが、このような出来事があってから、運河沿いには水質についての注意喚起が看板で施され、「アラワイ運河の水には触れない方がいい」という認識が広がりました。地元のカヌークラブが練習で運河を使っていますが、傷がある場合は特に注意するように、また、練習後はよく体を洗うようメンバーに呼びかけています。
そんなアラワイ運河の状況を改善するために、あるプロジェクトが始動しました。
微生物の力を使って汚泥から有害物質を取り除き、「泳げる」「魚釣りができる」アラワイ運河にすることを目標とする「The Genki Ala Wai Project」。ゲンキボールと呼ばれる、微生物が入ったボールを作り、運河に投げ込む活動を2019年から行っています。3月に行われたホノルル・フェスティバルでも、ゲンキボールを投げ込む機会が設けられ、筆者も参加しました。
ゲンキボールの材料は、水、糖蜜、米ぬか、土、EM・1🄬(Effective Microorganisms、有用微生物)。これらを混ぜてボール状にすることで、運河の底に効果的に微生物が到達し、汚泥に接触すると、微生物が活動を始めるという仕組みのよう。この有用微生物を発見したのは、琉球大学の名誉教授でいらっしゃる比嘉照夫氏。アラワイ運河だけでなく日本各地で、水質改善のために教授が開発されたEMが使われているそうです。
ハワイ・コンベンション・センターをメイン会場に行われたホノルル・フェスティバル。センターのすぐ裏手がアラワイ運河ということで、ゲンキボールを手に参加者が運河に出て、一斉にボールを投げ込みました。「アラワイ運河、きれいになーれ!」と祈りながら…。
この活動は、主に近隣の学校の先生や生徒が携わっていますが、地元の多くの企業も活動に関わっています。すでに多数のゲンキボールが投入されており、その成果として、底に溜まった汚泥の深さにも変化が見られ、2021年から2022年にかけて、場所によっては1年で40㎝分減った所も(The Genki Ala Wai Projectウェブサイトより)。水質が改善されたことにより、以前に比べると、より多くの魚や、マンタレイ、ウミガメなどが見られるようになった上に、2023年3月初頭には、ハワイアン・モンク・シール(アザラシ)まで運河に登場し、ニュースになりました。
運河の水質改善のために、地元の人々が積極的に関わっているゲンキ・アラワイ・プロジェクト。これからも応援していきたい活動です。運河の完成当時のように、釣りやボート遊びが楽しめるアラワイ運河に戻る日が、一日も早く訪れるといいですね。