高校生による体験学習:ビーチクリーンからイベント展示まで一連のSDGsプロジェクト

2021.03.15

ハワイ州観光局が高校生と共に実施したSDGsプロジェクト

ハワイ州観光局は、ハワイが持続可能な観光地として、美しい自然資源と伝統文化を守り、継承していくために、住民、旅行者、観光従事者のそれぞれが担う責任と役割について考え、旅行者がハワイの自然や文化体験を楽しみながら体験できるプログラムを開発しています。このプログラムの1つに、次世代に向けたグローバル人材育成のための教育プログラムがあります。

参加する学生の皆さまが、この教育プログラムを通じて、旅行先の住民が大切に守る自然環境や文化、習慣に敬意を払い、正しい行動を取ることができる旅行者(=ポノトラベラー)となること、そして、素晴らしいハワイの自然や文化を守り続け、後世に伝えていただく人材となることを願っています。

プログラムの事例として、ハワイ州観光局が2019年9月~10月、京都府にある立命館宇治高等学校の生徒たちと共に実施したSDGsプロジェクトを紹介します。

高校生によるハワイ島でのビーチクリーン

2019年9月21日の国際ビーチクリーンアップデーにあわせ、ニュージランド、オーストラリア、日本の学生が参加し、ハワイ島カミロポイントでビーチ清掃を行いました。日本からは、京都府立命館宇治高等学校の生徒らが参加しました。

ハワイ島南部のカミロポイントとは?

ハワイ州ハワイ島には、世界のゴミが大量に漂着する、カミロポイントがあります。ここは、北太平洋の4大海流(北太平洋海流、カリフォルニア海流、北赤道海流、黒潮)によって、時計回りの環流が作られ、漂流物は、北太平洋を旋回しています。

その渦の中心である海域は、太平洋ゴミベルトと呼ばれ、ハワイもこの海域に含まれています。この太平洋ゴミベルト地帯に位置するカミロポイントは、この環流によって、プラスチックの残骸が大量に漂着する場所です。これらのプラスチックは海洋生物への影響が懸念されています。

年間を通じて、定期的にビーチ清掃が行われているカミロポイントでは、過去15年間で約230トンのゴミが清掃されています。

カミロポイントの場所

カミロポイントでの清掃活動

カミロポイントでの清掃活動では、漁業関係のゴミが大半を占め、カキの養殖用のパイプ、ロープ、ペットボトルのキャップなど多数のプラスチックゴミを拾いました。ゴミの中には、石巻漁港や魚市場の表記の漁業用のカゴなどもあり、東日本大震災による日本からの漂流物もありました。

2日間にわたって行ったビーチクリーンは、1日目は、大きめの漂流物を中心に約400kgの量、ゴミ袋約55個分を拾い上げました。そして2日目は、清掃ポイントを少し移動し、マイクロプラスチックなどの小さめのゴミ約250kgの量、ゴミ袋約33個分を清掃しました。
1日目、2日目と異なるサイズのゴミを回収することでゴミの分別も行いました。

文化体験や国際交流も

ビーチクリーン終了後、Konawaena High & Middle Schoolを訪問し、約300名の生徒に迎えられ、カミロポイントでのビーチクリーンの体験を現地の学生と共有しました。
またハワイ島滞在中には、プウホヌア・オ・ホナウナウを訪れハワイの文化体験や、ワイピオ渓谷では歴史を学びトレッキングを楽しみました。

このように、ハワイ島では、各国の同世代の生徒たちがビーチクリーン、文化体験、現地学生との交流を通じて、現地の自然や文化を守る「責任ある観光」について学んでいただきました。

日本帰国後、地元でも清掃活動を実施

ハワイ島でのビーチクリーンを行った立命館宇治高等学校の生徒たちは、日本帰国後、ハワイ島での体験を校内で共有し、2019年10月6日、地元の鴨川で生徒たちがボランティア活動として清掃活動を行いました。

鴨川で集めたゴミを使って絶滅危惧種のウミガメ「ホヌ」を制作

鴨川で集めたホース、ペットボトル、空き缶などのゴミは、清掃のみに終わらず、このゴミを使って、絶滅危惧種であるウミガメを見立てたオブジェを生徒たちが作りました。これは、鴨川の「ゴミの投棄」問題、そして、絶滅危惧種ウミガメ保護を訴えるオブジェとなりました。

オブジェを制作した生徒は、「このオブジェを通じて、ハワイで絶滅危惧種と指定されるウミガメなど海洋生物が、捨てられたゴミによって大きな影響を受けていることを知ってもらいたい」「鴨川などゴミの投棄が自然破壊につながる危機感を持つべきである」と話していただきました。

制作いただいた生徒のみなさまのコメント

Iさんからのコメント
ハワイに行って、そのあと自分の地域のゴミを見て僕は本当の原因は川から流出しているものが分解されて海に流されてカミロポイントのような場所に最終的に集まっていることがわかりました。なので僕はこの清掃活動をクラスの少人数の人、留学生、先生方とできて少しだけでも影響力のある人になって環境の役に立っている気がしました。
カメ作りでは大型のゴミが多すぎてこの亀にどうやって入れようかと思うことが何度もありましたが、重くなったりしてもできるだけの多くのゴミをカメに入れて見てほしいと思ったので、鴨川で拾ったもののほとんどは入れました。これをツーリズムExpoジャパンに来場される皆様にご覧いただき、実際に日本の川の状況を知ってもらえれば、またたくさんの人に発信できると思いますのでこのプロジェクトはとてもこれからの未来に意味があると思いました。

Kさんからのコメント
最初川を見た時は結構綺麗に見えたのでが、実際に掃除を始めると、大きめのゴミが大量に出てきて驚きました。今回ゴミでウミガメを作って、少しでもゴミはゴミ箱にという意識を持ってくれる人が増えて欲しいと思います。

Sさんからのコメント
僕は、今回鴨川の清掃に参加して、川の中に入って実際に掃除した人にしかわからない現状がありました。見た感じは、あまり汚いようには感じないのですが、想像以上にゴミが落ちていて、中には明らかに捨てたものも含まれていました。ペットボトルやコンビニの袋、パイプ椅子や水道管の一部、さらには絨毯も捨てられていて、半日掃除しただけでも軽トラック1台分のゴミが集まりました。今回だけでこれだけ集まったということは日本全国で見ると今回の何千倍ものゴミが川にあると思います。最初は小規模で活動していき、どんどん大きくして日本全体に広がれば、川からのゴミが減り、海洋汚染も少しは改善されるのではないかと思います。
なので今回の活動を継続的にやっていきたいと思います。僕はウミガメを作る時に、僕たちが作った作品を見てもらい現状を知ってもらうことで、ゴミのポイ捨てや不法投棄などを減らそうと思うきっかけになってほしいという思いを込めて作りました。このプロジェクトに参加できて本当によかったなと思います。自分自身でもできるだけプラスチックを使わないように心掛けたいと思います。

制作したウミガメの2体のオブジェは、ツーリズムExpoジャパン2019にて展示

高校生が制作したウミガメのオブジェは、2019年10 月 24 日(木)~27 日(日)インテックス大阪にて開催されたツーリズムExpoジャパン2019のハワイ州観光局のパビリオン内で展示しました。

このウミガメのオブジェは、実際にウミガメと遭遇した際に、3 メートル以上離れて観察を行うことを啓発するために、3 メートルの距離感を体感する観察推奨距離を床にも表示しました。

ツーリズムExpoジャパン2019のハワイ州観光局のパビリオンでは、海洋生物の保護のために、寄付金を募りました。

ウミガメ、ハワイアンモンクシール、イルカ、クジラなどの海洋動物の保護活動をハワイでおこなっているNPO機関「Hawaii Marine Animal Response」に、
パビリオンを訪問した皆さまから寄付いただいた534.59ドルを、寄付しました。

ホヌのオブジェ制作に携わった生徒の皆さまは、ツーリズムExpoジャパン期間中、ハワイ州観光局のパビリオンを訪れ、多くの来場者がホヌのオブジェの前で立ち止まっている様子をご覧いただきました。

このように、ハワイでの教育プログラムからはじまり、地元での清掃活動、さらにその清掃活動から一般の皆様への啓蒙活動と一連のプロジェクトに参加いただきました。この取り組みは、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」と連動し、体験学習からSDGsを学ぶ機会となりました。

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