地域社会に根ざしたデスティネーション・マネジメント・アクション・プラン(DMAP)

2022.03.11

ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)は、カウアイ島、マウイ・ヌイ(マウイ島、モロカイ島、ラナイ島)、オアフ島、ハワイ島の各郡および各島の観光局と協力し、2021年から2023年までの3年間で観光産業の安定化、パンデミックからの回復、そして各島が望む観光産業への再構築のための地域密着型のデスティネーション・マネジメント・アクションプラン(DMAP)を作成し、観光の再建、再定義、方向性の再設定を目指します。

2019年、ハワイ諸島への訪問者数は過去最高の1038万人に達しました。結果的に177億5000万ドルの経済効果をもたらし、20億7000万ドルの税収入、21万6000人の雇用を支え、観光業はハワイ州国内総生産(GDP)の16.2%を占め、不動産およびレンタル・リースの18.8%に次ぐ2番目で、ハワイにとっても重要な産業です。一方、訪問者数の増加は、一部の観光地や地域社会の環境に負荷を与えました。HTAは、住民の意識は健全な観光産業を維持するために重要と考え、毎年観光業に対する住民意識調査を実施し、観光産業が住民に与える好影響と悪影響を明らかにしています。2019年の意識調査報告書によると、住民の意識は前年と比較して概して低下していることが示されました。このような状況は、ハワイに限ったことではなく、イタリアのベニス、ペルーのマチュピチュ、日本の京都など、他の人気観光地でも観光による悪影響が指摘されており、それは住民の生活の質だけでなく、訪問者の旅行体験の質にも影響を与えます。

DMAPは、各島の運営委員会の指揮のもと、地域社会、観光産業、その他の企業団体の参加によって、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)、人口過密な観光名所、交通負荷、その他の観光関連問題の解決策の提唱、自然・文化資産の保全などについて意見を反映し、住民の生活の質を向上させ、訪問者の体験を改善するために必要な分野や実行可能な解決策を明らかにするものです。活動内容は、HTAの戦略プランの4つの柱(自然資源、文化継承、地域社会、ブランドマーケティング)と相互に関連づけられ、整合性を確保し、組織的な目的を達成するために実施されます。HTAは、地域主導型の観光プログラムにおいて、地域社会、観光産業、その他企業団体がハワイの観光産業をより良い発展のために必要な取り組みを支援していきます。

DMAPの目的

  • 3年間の協業事業を通じて、観光の方向性を再構築、再定義、リセット
  • ハワイの観光産業、地域社会、他業種、政府機関の協力と関与
  • 地域環境負荷を軽減するために管理が必要な領域を特定

カウアイ島のDMAP

2019年、カウアイ島への訪問者数は1,370,029人で、居住人口72,293人の島に毎日27,695人が訪れたことになります。観光客の大半は米国本土からで、カナダとオーストラリアがそれに続き、日本からは25,333人でした。2019年の観光業に対するカウアイ島住民の意識調査結果によると、観光客による交通渋滞、地域文化に対する配慮の欠如、生活費の向上、環境破壊を感じていることが報告されており、全体的に観光産業に対する住民の意識が低下していることがわかりました。カウアイ島には手つかずの自然が残り、地域社会では先住民の文化が大切に継承され、島独特の雰囲気やアロハスピリット、健康的でリラックスできる体験することができる一方で、州や連邦レベルでのリーダーシップの欠如、物価の高騰、交通渋滞、雇用の喪失などの問題に直面しています。具体的な活動計画では、自然資源を保護する法律の管理と施行を改善、交通インフラおよび移動手段の整備などに注力するほか、ホットスポットと呼ばれている局所的に観光客が集中する場所ごとの問題解決に注力しています。

DMAPの目標

  • カウアイ島民の生活の質への積極的な貢献を実現
  • カウアイ島の自然資源の維持、強化、保護を支援
  • 住民と訪問者のための体験、資料、マーケティング活動において、ハワイ文化を正確に表現
  • カウアイ島での体験に対する訪問者の満足度を維持・向上
  • カウアイ島の観光産業の経済的貢献度を強化
  • 住民と観光産業のコミュニケーションと理解を深める

主な活動計画

  • カウアイ島の自然資源を保護する法律の管理と施行を改善
  • 訪問者数の管理
  • 観光客や住民への情報提供(条例や規則、適切な行動など)
  • 交通問題やインフラ整備
  • 双方向のコミュニケーションと産業界との連携
  • 地元企業のサポート

https://www.hawaiitourismauthority.org/media/6771/hta-kauai-dmap.pdf

マウイ・ヌイのDMAP

2019年、マウイ島への訪問者数は過去最高の3,059,905人になりました。観光客の8割が米国本土からで、海外からはカナダとオーストラリアに続いて、日本から46,684人が訪れました。マウイ島の人気は高く、旅行者の意識調査では、90%がその体験を高く評価している一方で、交通渋滞や物価の高騰、日本人を含む外国人観光客の受け入れ態勢について懸念があることがわかりました。また、リピーター率が71%と高く、83%がドライブによるセルフガイドツアーを利用しており、ガイドツアーや歴史や文化、芸術に関する施設に行く人は19%に留まっていました。2019年の観光業に対するマウイ島住民の意識調査結果によると、観光に対する意識はポジティブなものではなく、観光が交通渋滞を引き起こし、島の物価を高騰させると感じているほか、観光客は地元の文化や土地への配慮が欠如しており、その活動は環境を破壊していると感じていることが報告されており、全体的に観光産業に対する住民の意識が低下していることがわかりました。マウイ・ヌイのDMAPでは、守るべきもの、軽減すべきもの、育てるべきもの、ギャップを埋めるべきものなどを、具体的な活動計画に盛り込みました。
※ マウイ・ヌイは、マウイ島、ラナイ島、モロカイ島、カホオラヴェ島、ハワイ州マウイ郡の4島のことだが、DMAPではマウイ島、ラナイ島、モロカイ島の3島について述べている。

DMAPの目標

  • マウイ・ヌイの経済的な回復を観光で牽引する
  • 住民の生活の質と旅行者の体験の質の向上
  • 持続可能な地域社会経済の実現
  • マウイ・ヌイの自然資源の維持、強化、保護を支援
  • 住民と訪問者のための体験、資料、マーケティング活動において、ハワイ文化を正確に表現
  • マウイ・ヌイでの体験に対する訪問者の満足度を維持・向上
  • マウイ・ヌイの観光産業の経済的貢献度を強化
  • 住民と観光産業のコミュニケーションと理解を深める

主な活動計画

  • 違法な宿泊施設の取り締まり強化
  • 住民と同じ価値観を持つ観光客の訪問
  • 観光客への情報提供(条例や規則、適切な行動など)
  • 双方向のコミュニケーションと産業界との連携
  • 交通問題やインフラ整備

https://www.hawaiitourismauthority.org/media/6860/hta-maui-action-plan.pdf

ハワイ島のDMAP

2019年、ハワイ島では訪問者数が200万人となり、居住人口200,980(2018年統計)の島に全住民の約15%にあたる35,700人が毎日訪れたことになります。観光客の大半は米国本土からで、海外からは日本とカナダからの観光客が多く訪問しました。2019年の観光業に対するハワイ島住民の意識調査結果によると、観光客の交通事故が多発しており、土地や文化に敬意を示さず環境破壊や一部観光地の過密問題に拍車をかけていると感じていることが報告されました。また、過去10年間で「観光は問題よりも多くの利益をもたらした」と感じる住民が減少し、観光業に対する意識を改善するためには住民の生活の質を向上させることが鍵となると報告されています。ハワイ島の観光産業は協力的で、課題解決のために積極的に取り組む意欲があります。豊かな自然、文化資源を適切に維持管理していれば、これからも世界中からの観光客により良い体験を提供することができます。ハワイ島を訪れる観光客にとって課題となっている交通手段の課題解決については、水素バスシステムの研究開発を進めており、給油施設の設置や維持管理費用など、観光産業が支援を検討しています。

DMAPの目標

  • ハワイ島民の生活の質の向上へ積極的に貢献
  • ハワイ島の自然資源の維持、強化、保護を支援
  • 住民と訪問者のための体験、資料、マーケティング活動において、ハワイ文化を正確に表現
  • ハワイ島での体験に対する訪問者の満足度を維持・向上
  • ハワイ島の観光産業の経済的貢献度を強化
  • 住民と観光産業のコミュニケーションと理解を深める

主な活動計画

  • 地域主導で地域密着型の教育や行動を管理
  • 地域主導の意思決定と地域密着型観光への関与の機会創出
  • 政府、観光産業、コミュニティ間の双方向のコミュニケーション
  • 住民と観光客双方が実践するポノの重要性
  • ハワイ島の自然・文化資源の管理と保護
  • 住民の生活の質の向上

https://www.hawaiitourismauthority.org/media/7245/hta-hawaii-island-action-plan-2021.pdf

オアフ島のDMAP

2019年、オアフ島を訪れた訪問者数は過去最高の615万人に達しました。オアフ島には、ホテル27,060室、コンドミニアムホテル3,956室、バケーションレンタル3,821室、タイムシェア3,782室、その他のタイプ621室を含む39,240室のビジター宿泊施設があります。ホテルの平均稼働率は84%で、その他の宿泊施設の稼働率も高くなっています。2019年の観光業に対する意識調査結果によると、訪問者からは交通事情やWi-Fi環境の改善、地元の文化体験ができる機会がもっと必要であること、街歩きや自転車移動などの課題が指摘された一方で、オアフ島の住民からは一部の人口過密状態、交通問題、環境問題、生活費の高騰などが観光によって引き起こされている問題として報告されており、観光産業に対する住民の意識が低下していることがわかりました。

オアフ島は安全な旅行先として知られており、美しい自然やアウトドア体験ができる「カントリー」と国際色豊かな活気ある「タウン」があり、ハワイの文化や歴史を体験できる一方で、多様な文化が共存するコミュニティがあります。また、宿泊施設、展示会場、交通インフラの整備がコンパクトに集約されており、レジャーだけでなくビジネスでも様々なニーズに対応することができます。一方で、観光客が訪れる人気観光地は人口過密状態による混雑や自然破壊を誘発するなども問題に直面しています。具体的な活動計画では、宿泊施設や交通インフラの管理、ホットスポットと呼ばれている局所的に観光客が集中する場所へ予約システムを導入するなどの管理強化、再生型観光の促進や地元産品のプロモーション強化などが含まれています。

DMAPの目標

  • オアフ島民の生活の質の向上へ積極的に貢献
  • オアフ島の自然資源の維持、強化、保護を支援
  • 住民と訪問者のための体験、資料、マーケティング活動において、ハワイ文化を正確に表現 オアフ島での体験に対する訪問者の満足度を維持・向上
  • 持続可能な観光産業と経済的貢献を強化
  • 住民と観光産業のコミュニケーションと理解を深める

主な活動計画

  • 違法な宿泊施設を管理し、新施設の開発を規制
  • 観光産業関係者にハワイの文化教育を支援
  • 旅行者の安全のための情報発信強化
  • 過密状態の人気観光地の管理強化、予約システムの導入
  • 再生型観光の促進
  • 地元産品のプロモーション強化
  • 交通インフラの整備

https://www.hawaiitourismauthority.org/media/7785/hta-oahu-dmap.pdf

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