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ハワイの固有種と伝統植物を守る「パパハナ クアオラ」の取り組み
ハワイ固有の文化と生態系を未来へと持続させることを目的に2006年に設立された非営利教育組織「パパハナ クアオラ(Papahana Kuaola)」は、オアフ島ウィンドワード地区のカネオヘで、旅行者も参加できるボランティアとして地域貢献できるコミュニティワークデーを毎月第3土曜日と第4土曜日に設けており、ハワイ固有の植物を守っていく重要性を啓蒙しています。
パパハナ クアオラは、カメハメハスクールから支援を受けたヘエイアアフプアア内のワイパオに位置する64エーカーの土地を拠点に、ハワイを経済的、環境的に健全に持続させるための機能的なモデルを作ることに取り組んでいる他、教育プログラムの開発と実施を通じて文化を永続することに努めています。
その活動のひとつが、誰でもボランティアとして参加することができるコミュニティーワークです。湧き水があり、小川が流れ、ロイ(タロイモ畑)が点在し、ハワイ固有の植物が生息するこの土地で、毎月第3土曜日は小川での作業、第4土曜日は『ラ・オハナ・ワイパオズ(Lā ʻOhana Waipao’s)』としてその日に必要な仕事を手伝います。初めての人や地元の人、小さな子どもや大人が集まり、雑草を取り除いたり泥を慣らしたりして、自然と調和しながらサステナブルな生活をしていた古代ハワイアンの知恵を、体験を通して学ぶことができます。ロイ作業終了後には蒸したタロイモを参加者で分け合っていただくのも大切な学びとなります。
【パパハナ クアオラ】
場所:46-403 Haiku Rd., Kaneohe
電話:808-447-7694
公式サイト:https://papahanakuaola.org
【ボランティア参加は事前にウェブサイトから申請】
第3土曜日 Stream Workdays(小川での作業)最大人数40 名
第4土曜日 Lā ʻOhana Waipao’ s(ロイなどでの作業)最大人数60 名
時間:9:00am〜12:00pm
申込サイト:https://papahanakuaola.org/volunteer/
*開催日時は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
NPO「パパハナ クアオラ」、会社「フイ ク マオリ オラ」の創設者
リック バルボッサさん
Q:今のハワイは昔と比べてどのような状況になっていますか。
A:ハワイの自然がどれほど変わっているのかといえば、アメリカ全土で絶滅危機に瀕している全ての動植物のうちの40%がハワイに存在します。これが現状です。特に大切なのは植物。この土地に生育していた植物があり、昆虫、鳥、動物、土、農作物があって、人々の暮らしや文化が成り立っていました。その種が失われるとバランスが崩れ、やがて生態系の破壊へとつながります。だから私たちは生物多様性の恵みによって支えられていたネイティブハワイアンの人たちの暮らしを学んでハワイ固有の植物を守り、ハワイを持続可能な島にするためにNPO『パパハナ クアオラ』の活動と、企業『フイ ク マオリ オラ』を発足して活動しています。
Q:ハワイの自然と人の暮らしを未来へつなげていくためには何が大切ですか。
A:ハワイアンの生活の知恵や具体的な手段、文化を学ぶことが大切です。同時に姿を消しつつある古来の植物を守ることも重要です。外から持ち込まれた植物は繁殖力が強いものも多く、変化に弱い在来種に大きな影響を及ぼしています。例えば、多くの人がハワイをイメージする、赤いハイビスカスやプルメリア、ピカケ、ホワイトジンジャーなどは外来種です。どれもレイに使われるなどハワイらしい植物ではあるのですが…。このコオラウ山脈を見て多くの人は「緑に覆われていて美しい。ハワイは自然が豊か」と言いますが、この緑の多くは外来種です。20年前は数本だった外来種があっという間に広がりました。原生の自然を破壊するスピードはとても速いので私たちは急がなくてはならないのです。自分たちにできることは、まずは固有種と外来種があることを意識すること。そして何がハワイ固有種なのかを知ること。私たちは庭やベランダで植物を育てることが好きです。プルメリアなどの外来種を育てて「私はハワイの植物を育てている」と満足する人もいますが、本当に大切に育てなくてはならないのはハワイの固有の植物だと思うのですが、何が知らなければそれはできません。
Q:私たちの身近にあるもので、何が固有種なのでしょうか?
A:皆さんもよくご存じのコアやオヒアレフア。それからホワイトハイビスカス。同じ白い色でも、オアフ島原産やカウアイ島原産、モロカイ島原産では種類が異なります。もう一点、お伝えしたいのは「伝統植物(カヌープランツ)」の存在についてです。ポリネシアからハワイに人が移り住み始めたときにカヌーで持ち込んだ植物のことで、カロ(タロイモ)、デザートで人気のウベもそうです。ウベはフィリピン語でダイジョ(紅山芋)のことで、ハワイ語ではウヒと言います。伝統植物は食糧となり、ククイやキー(ティーリーフ)のように生活や伝統文化にも欠かせないものでした。キーは肉を蒸すときに包んだり、食べ物をのせてお皿にしたり、薬にもなり、フラのスカートにも使うなど、多目的に使われてきて、伝統食や伝統文化において欠かせません。そのため伝統植物を守ることも大事です。
Q:この敷地にはキーやハワイアンバナナ、サトウキビ、スイートポテト、ククイ、ホワイトハイビスカス、そしてロイ(タロイモ畑)が広がっています。
A:ハワイ固有種と伝統植物がたくさんあります。ロイはそれほど大きくはありませんが、ここには65種類のカロがあります。元々は300種類あったカロは今や約80まで減ってしまいました。そのような状況もここに来てカロやハワイの植物と触れ合う体験を通して知ってほしいと考えています。
Q:パパハナ クアオラは、体験を通した教育プログラムがいくつもありますが、教育が重要ということですか。
A:教育はとても大切です。教育は気付きです。見ること、知ること、体験することで気付きを得られます。ここでは、教育の場を設けて様々な角度から学べるプログラムを実践しています。子どもたちへの教育はもちろん、コミュニティーワークとして家族で学ぶのも意義のあることです。
Q:経営されているフイ ク マオリ オラという会社ではどのようなビジネスをしているのですか。
A:趣味でハワイ固有種を育てていたのがきっかけで1992年に起業し、現在は育てた固有種をホームデポやシティミルなどのホームセンター、米軍内の小売店などに卸しています。また、州や連邦機関、商業施設、ホテルや個人宅などの造園管理サービスも提供しています。これにより多くの方がハワイ固有の植物を目にしたり、育てたりする機会を増やすことができました。多くの人が自分の周りの土地や植物に関心を持つようになってほしいと思います。パパハナ クアオラは、体験して泥んこになりながら学ぶ場であるのに対して、フイ ク マオリ オラは効率的に多くの人へ固有種に対する気付きを提供することができるので、NPOとビジネスと両方でハワイの文化と自然を守ることにつながると考えています。
Q:リックさんの今後の展望についてお聞かせください。
A:ハワイ固有種と伝統植物を次世代に継承していくことです。本来のハワイの姿を知ってほしいと思っています。それは、文化や言語だけではなく植物もそのひとつです。私は植物という観点から、小さな灯火をハワイ中に広めていきたいと願っています。
(資料/撮影:ライトハウスハワイ)
https://www.aloha-program.com/curriculum/lecture/detail/107