ハワイに暮らすアーティストたちは、自らの創作活動の拠点としてハワイを選び、そこで生活することに強い意味を見出しています。なぜハワイに住み続けるのか。ハワイの自然や文化、日常の営みをどう守り、次世代に伝えていくのか。作品の根底にあるハワイへの想いと真剣に向き合う彼らにとって、「マラマハワイ(ハワイを思いやる心)」とは何なのか——。
ここでは、そんな彼らの声を、OCEANS(オーシャンズ)の連載「Feel Hawai‘i」から抜粋してご紹介します。OCEANSは、サステナブルなライフスタイルに関心の高い世代に向けた男性ファッション&カルチャー誌。2023年から2024年にかけて、ハワイ在住アーティストたちの暮らしや作品を紹介する全12回の連載「Feel Hawai‘i」を実施しました。
クリスティ・シン

“ハワイの環境へダメージを残さないように”
観光客が増えすぎて、その影響を受けている場所は世界中にたくさんあります。世界中の人々がハワイに来て、ハワイを体験したいと思うことは、美しく素晴らしいことだと思います。それを抑制するべきではないと思いますが、観光客が訪れる理由や体験を壊さないように、計画を立てて注意を払うことが本当に重要です。観光客は自分たちがどのようなダメージをハワイに与えているか知らないことが多いので、そこを理解してもらうために働きかけていくことは大切だと思うのです。一度失ってしまうと、戻ってこないことが多いから、真剣に考えていかなくてはなりません。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/48234
ジャスパー・ウォン

“ハワイの「文化」に目を向けてほしい”
ハワイの経済や産業にとって観光がいかに重要であるかは、パンデミックのときに学んだ。だから私たちは、観光がハワイに必要であることは理解している。同時に、ハワイの歴史、環境、先住民の居留地についても、訪れる人々にもっと知ってほしいという思いはあるよ。ハワイを訪れ、ハワイ独自の歴史を理解すること。王制が倒れてもハワイがあるのは、アジアからの移民、砂糖プランテーションなどの歴史があるから。ワイキキを超え、ビーチを超え、文化に目を向ける気持ちを持ってハワイを訪れ、ハワイの文化を楽しみ、学んでもらいたい。そして、オープンマインドで来てもらうことが重要だと思う。これまでにもたくさん語られてきたことで、これからも語られるべきこと。ハワイの歴史はもっと共有されるべきだと思うんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/46849
SHINGIIIIII (シンギー)

“ハワイの自然環境のことは、沖縄とも共通する課題”
昨年ハワイのコンファレンスで自然に対しての考え方や、アロハの心などを知り、自然環境を守り続ける考え方は、自分が住んでいる沖縄も同じ問題があるから理解できました。自然に対しての考え方というのは、僕も自然をアートとして描いているので、自分も訴える人になりたいし、なっていかなければならないと思うんです。ハワイに来た時点でみんなが自然を守らなければならないという責務は当然負っていると思っています。特にプラスチック問題とか、漂流してくるごみ問題なども、海の問題は深刻なので、企業努力もあると思いますが、自分が発信できることとして自然の絵をみなさんに見ていただくことで、ハワイの環境への大切な考え方や思いやりの心を感じてもらえれば思います。そのためにも、僕自身がもっともっとハワイにいて発信していきたいと思っています。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/47201
スティーブン・キーン

“自然との一体感を表現したいから、環境を常に意識している”
いつも環境に配慮することを意識している。僕のアートワークでは、海の美しさや海で感じる感覚を表現しようとしているから。誰もが、ビーチでゴミを見つけたら、自分のものでなくても拾ってゴミ箱に入れる。土地を大切にし、土地の美しさに感謝する。この地に住む人にとっても、旅する人にとっても、とても大切なことだと思う。自然との一体感を考えれば、両方を大切にすることができると思うし、旅をしたときは、訪れたときよりも良い状態にして帰りたいと思うよ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/44764
デール・ホープ

“ハワイはデザイナーやアーティストにとって最高の環境”
ハワイはアーティストにとっては最高の環境だ。緑に囲まれているからね。周りを見渡せば、ティーリーフ、モンステラ、ヘリコニア、ヤシの葉。身の回りにあるものすべてをテキスタイルのデザインに使っているんだよ。そして、魚や風景、これはインスピレーションの宝庫なんだ。それから海に入って貝殻を見る。そして魚、サーフィン、カヌー、セーリング、フラやウクレレなど、ここにあるものすべてがとてもカラフルで活気に満ちているんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/47614
ニック・カッチャー

“ハワイはアーティストにとって人生を豊かにしてくれる環境”
ここは観光に非常に依存しており、経済の大きな部分を占めているという面もあるわけで、だから、そのための責任ある行動をする必要があると思う。自分がどこかへ旅行に行くときには、その地域の滞在客であることを自覚して行動する。今はハワイを楽しむためにここにいるけれど、ハワイの環境や文化に敬意を払うこと(マラマ)をいつも忘れない。そこにはそれぞれに責任があると思うんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/45478
ノア・エンバーソン

“アーティストの視点から考える、ハワイの環境と未来”
ハワイの観光と環境の未来について、それは身近で大きなテーマ。『カポノ』(※)の観光客をどうやって呼び込むか。そのような観光客が惹きつけられるような、より面白い作品を僕は作ることができると思っているんだ。奥深いアートに興味を持ってくれる観光客が増えてくれたらうれしい。そういう人が多ければハワイにとって環境は良くなるし、未来にも繋がると思う。少なくとも、私が世に送り出したい。日本のマーケットは、『ポノ』(※)の観光客のモデルだと思う
※Kaponoとは、ハワイ語で「まっすぐ」「ありのままの」という意味で、Ponoはハワイ語で「正しい」「善良」という意味。 「正しい方向に導く」「感謝し幸福になる」などの意味もある。つまりポノとは、ポジティブな言葉や思考、行動のこと。 思いやり、優しさ、楽しさ、嬉しさ、喜びや祝福の言葉。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/45817
ヒトシ・ヒダ

“ハワイの環境から、インスピレーションが湧いてくる”
特に、絵を描くために出かけるスポットはないけれど、毎朝散歩するときにいろいろな草花や山、雲、空みたいな自然が何かを訴えかけてくる気がする。ハワイは環境がいいからいつもインスピレーションが湧いてくるし、景色もいいし、いろいろな花も咲いているし、人々も素晴らしいし、あまりプレッシャーも感じないし、本当に自由に描ける。僕は自然が好きだから、今の自然やハワイの良さをずっとキープしてもらいたい。地元の人も旅行者も環境について意識し続けてほしい。美しい自然の絵を描いて、ハワイの美しさを残しておきたいと思っているんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/47936
ポール・フォーニー

“常にハワイからインスピレーションをもらえる幸運”
ハワイで育った僕たちは、ハワイを『マンガランド』と呼んでいた。ここに住んでいると、まるでマンガの国で育っているようだったから。ここの自然の美しさは特別にカラフルで、四季を通して木々も、花も、海や川の水も本当に美しい。ここに住めて本当に幸運だよ。そして、マラマハワイ(ハワイを思いやる心)を伝えるためにアーティストとして何ができるか考えることがある。生まれ育ったこのハワイの美しい海を常々守りたいと思っているんだ。それはこれからの時代を生きる小さな子供たちに伝えていきたい重要なこと。英語が分からない旅行者にも必ず伝えていきたいと思ったときに、僕がアーティストとして何ができるかと考えると、楽しく分かりやすい漫画やアニメを作ることで”ハワイの美しい海を守れるか、また安全に海とともに暮らしていけるか”をすっと理解できると思うんだ。年齢も言葉も超えて、それが誰にでも分かるようにすることが大切だ。基本的な水の安全についても、ハワイの海には神聖な場所があることも知ってほしい。だから、海をテーマで描き続けてきた僕のミッションとして、いつか分かりやすいツールを作りたいんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/44489
マティアス・ソラリオ

“先人のハワイアンの知恵を残すお手伝いをしたい“
私のようなハワイに来たばかりの人間にとって、常に環境について責任を持つことはとても重要なだと思うんだ。ビーチに行くのも、買い物をするのも、できるだけ地元産のものを買うことにしている。私は800年前に作られたというカネオ地区に残るフィッシュポンド(養魚池)の外来種を除去して修復するボランティアをして、たくさんの喜びを見つけたんだ。そのフィッシュポンドには外来植物がたくさん生えていて、今は養魚池として機能していないんだけど、数年後には、カネオヘで実際に利用可能な養魚池になることを期待しているんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/44989
ミリアム・エンゲル

“旅好きだから、常に環境に気を配っています”
旅をするときによく考えることは、それが世界のどこであれ、この島であれ、自分のお金がどこに行くのかに気を配るようにしています。エコロジーの観点からも、なるべく地元の経済が活性化されるように、その責任を持つようにしています。普段の買い物や食事についても同様ですが。それが観光や環境に配慮し、同時に敬意を払うことができる簡単な方法だと思うんです。私たちがするアート活動と、それが環境に与える影響もいつも考えていますね。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/46176
ランディ・ラリック

“これからのハワイの観光と環境について思うこと“
ここ10年でマインドシフトがあったと思う。以前はもっともっとという感じで観光客を増やそうとしていたから、ノースショアのプロモーションをよくやっていた。“トリプルクラウン、ノースショア、ビッグウェーブなどのコンテストを見に来てください”とノースショアに人を呼び込もうとした。ハレイワもそう。12年ほど前、パイプラインに行ったとき、私はビーチパークを歩いていたら、なんと女性用トイレには50人もの人が並んでいた。これはまずい、人が多すぎると……。私たちには、プロのサーフィンをどう見せるかが大切で、ハナウマ湾自然保護区は良い例。ハナウマ湾は、魚を見に行くには美しい場所だけれど、3000人もの人がいてあまりにも人が多すぎた。だから今は人数を制限しているんだ。この“再生観光”というアイデアは実に賢いと感じるよ。日本からの旅行者はとても繊細だと感じる。彼らは敬意を示し、敬意を得る。現地の文化にいかに敬意を表し、同時にそれを学ぶかが重要だと思うんだ。https://oceans.tokyo.jp/article/detail/46531
Mālama Hawaiʻi ”マラマハワイ” は、ハワイを思いやる心。レスポンシブル・ツーリズムのハワイ版スローガンです。詳しくはこちらの特設サイトをご参照ください。